となりの小狐丸

整体という仕事を生業にして、人の身体に触れてきたことで見えてきた目に見えないものの不思議をご紹介します。

7、魔族ハンター

紫音さんに、不成仏霊となった叔父の浄霊をしてもらってから、叔父の位牌はピタリと動かなくなった。

紫音さんは「一応、この叔父さんの写真を預からせてください。私の師匠に確認を取ります」と言って写真を持って行った。

「謝礼はいかほどでしょうか?」と尋ねる私に、「これは神からのご依頼なのでお金はいただけません。」と言って頑として受け取ってもらえなかった。

なので、妻と相談して、アロマのグッズを購入し、それを渡しがてら、飲みの食事に誘ったら快く来てくれた。

近くの居酒屋で、我が家の問題も解決し、お互い成功を祝して飲むビールは実に美味い!。ゴクゴク喉を落ちてゆく。

目の前で、明るい笑顔でサワーを美味しそうに飲む紫音さんは、この間の浄霊の時とはうって違ってどこにでも居そうな普通の女性だ。

私はお礼の気持ちもさることながらいろいろ聞きたいことがあった。

「紫音さん、あの式とはどういった御仁なんですか?」

「まあ、ヤクザみたいな者です」

「はぁ、ヤクザの不成仏霊ですか?」

「いやいや、人間じゃないです(笑)」

フフフと笑ってそれ以上は教えてくれない。モンストに出てくる魔獣みたいなやつなのか??それしか思い浮かばない。何故、何故そんな魔獣が家来なんですか??

「契約をするんです」

と紫音さんは言った。

「私の霊力を供給する引き換えに契約を交わすんです」と。

「・・・・・・・・・」

霊能者の世界は我々凡人には計り知れない世界があるのだろう。そうとしか思えない。

「私は、不成仏霊の浄霊の仕事よりも、この世に蔓延る魔族を駆逐したいんです」

「マ、マジデスカー??」

「この世の中は人間の魂の数と魔族の数のバランスが崩れてきています。私は少しでも微弱ながらでも、このバランスを戻していきたいんです。」

「・・・・・・・・・・」

話が壮大すぎてよく分からない。少なくとも「あなたにも私と共に戦ってほしい」という勧誘の話じゃないだろう。私には人の首根っこを叩いて腕を捻ることしかできない。

「これが私の使命ですから」

と、明るくにっこりしながらサワーを美味しそうに飲む紫音さん。

もしかしたら、なんの使命感も危機感も無く、説明のつかない張り凝りをぶっ叩いてきたけれど、それはもしかしたら「魔」だったかもしれない・・・・・

私は、急に飲む酒が不味くなった。



記事に出てくる氏名はすべて仮名とさせて頂きます事ご了承ください。


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6、浄霊

紫音さんが、私の叔父の浄霊をしてくれるのは金曜日の夜に決まった。

それまでに紫音さんから用意をしてください、と言われた物が叔父の写真と私の産土の神を調べることだった。

産土の神とは、私が生まれた土地を管轄する神社の主祭神である。私の産土の神は、稲荷神社で宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)だった。

その日、紫音さんは白いワイシャツに黒いブレザーという正装で現れた。

「ふぅん。宇迦之御魂神だったんだ。私は宇迦之御魂神と相性がいいんです。やはりこの仕事は宇迦之御魂神からのご依頼、のようですね。」と紫音さんが言った。

そうか!自分の主祭神さまがご依頼してくださったのか!感謝の気持ちしかない。

「浄霊を始める前に、式を使って結界を張ります。」

「はぁ、シキってなんですか?」

「私が使役している部下です。式神みたいな者なんですが、式って呼んでます。」

「使役する家来までいるんですか??!」


「この使役する者を使うにはかなりの霊力が要るんですよ」

それはどんな御仁でいらっしゃるんですか?と聞いても「フフフ」と笑って教えてくれない。

この浄霊にあたって、紫音さんがわざわざ用意して下さった、御嶽神社の塩とお神酒を皿に乗せ、ひと嘗めづつする。

「それでは浄霊を始めますね」

紫音さんは私の叔父の写真を手に取り、瞑想を始められた。

私と、一緒に参加した妻とで固唾を飲んで見守る。

5分程して

「はい。終わりました。」

「早っっ!!」

「今叔父さんと魔を切り離しました。説得にちょっと時間がかかったんですけれど、あの世に上がりました」

そんな簡単に・・・・・・・ただただ驚くばかりである。

「最後にやわらぎ先生と奥様に何か魔が飛び火していないか見ますね。」

と言って、先ずは妻から霊視してもらった。が、何もないようだ。

次に私の前で手を合わせる紫音さんが「ん?」といって頸を捻る。不安しか湧き上がってこない。

次の瞬間、おもむろに紫音さんの正拳突きを胸に喰らい「ぐえっ」となる私。

紫音さんが何か見えない者を掴みだした様だった。

「凄いのを持ってましたね!魔族の幹部クラスがいましたよ。そんじょそこらで拾ってこれる者じゃないですよ、これ。よくこんな者持ってて普通に生きていましたね。普通なら今頃病院で寝たきりか大物犯罪者ですよ。」

げげげげげぇぇええ!なんで私にそんな大御所様が?」

「多分叔父さんからの繋がりで貰ったんでしょう。やわらぎ先生が一番叔父さんが成仏していないことを心配していたから。」

「・・・・・・・・」

「この幹部、私の家に持って行って尋問しますね。」

魔族の幹部すらしょっ引いて尋問する紫音さんとはいったいどのような修行をしてきたのだろう?その後その魔族の幹部がどうなったのかは私は知らない。

記事に出てくる氏名はすべて仮名とさせて頂きます事ご了承ください。



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5、不成仏霊になった叔父

私の母方の叔父は私が2歳の時に自殺しているので話をしたことがない。

母カオルの2歳年上で柴田智義という。

智義叔父さんは子供のころから明るく人に優しく、あだ名は「大仏」と言う名がつくほど人から慕われていた。別に大仏にそっくりと言うわけじゃない。

そんな叔父さんが35歳で自殺した。近くの河原で車を止め、排気ガスをホースで車内に充満させ、排気ガス自殺をした。

智義叔父さんの妻(私の叔母)ハツエさんは「そんな位牌はいらない」と言ってウチに置いていった。なので、柴田の叔父さん、おばあさんの位牌がウチにあった。

柴田のおじいさん(カオル、智義の父)はその2年後に亡くなって、後妻のおばあさんがおじいさんの位牌を供養していた。

私が6歳の時のある夜、その後妻のおばあさんから「今すぐ来て!」と電話があった。切迫している様子だ。

父と母と寝こけた私がおばあさんの家にあわてて駆け付けた時、

見知らぬおばさんが「うぅぅ・・・、うぅぅ・・・」と呻きながらラーメンドンブリで水をゴクゴク飲んでいた。


父は「この人は頭がおかしい人なのかな?可哀そうに…」と思っていたらそのおばさんに見透かされたのか、

「この水はね、私が飲んでいるんじゃなくて柴田の家の不成仏霊が飲んでいるんだよ!」と一喝された。

そのおばさんはおばあさんの友人で、霊能力者なんだとか。たまたまこのおばあさんの家に遊びに来たら、おじいさんの仏壇に乗った果物をむさぼるように食べている不成仏霊がいた。その霊がおばさんに憑いて今はラーメンドンブリで水をゴクゴク飲んでいたそうだ。

「この仏はね、喉がただれて苦しんでいる。その喉を潤そうとおじいさんのお供え物の果物をむさぼるんだけどちっとも喉を通らない。この仏は供養されていないねえ。」

父が智義叔父さんが自殺していることを話したら「その霊だ!!」と言われ、母カオルはカッとなった。

「兄の供養はちゃんとウチでやっています!お供え物もしているし一周忌も三周忌もやりました!」

「あんたは柴田の家から出た人間だろ?あんたがいくら供養したってこの仏は遠慮してお供え物に手を出せないのさ。なんでこの仏の身内が供養しないんだい?」

と言われたら返す言葉がない。

「あぁ、もうおそらくこの仏の身内に霊障が出ているよ」と言った。

「どうしたらいいですか?」と父が訪ねると、

「このお供え物の果物を持って、家の近くの河原に流して手を合わせてきなさい。そしてお供え物を川に投げたら絶対に振り向いてはいけないよ。振り向いたら仏に未練が残って上に上がらないよ」と言われた。

その足で、果物をもった父と母は叔父が自殺した河原に行って、果物を川に投げ手を合わせた。

変なところに律儀な父は、帰り際何度も振り返って手を合わせた。

母がやめろと言うのに何度も何度も振り返ってお辞儀をした。

家に帰ると電話がジャンジャンなっていた。おばあさんからだった。

「あれほど振り返ってはいけないと言ったのに振り返ったね!!今、その霊が霊能者のおばさんのところに帰ってきて七転八倒してるわよ!!」


「あれは大変だったねえ」と後日、他人ごとのように話す母に「それでその霊能者のおばさんどうしたの?」と聞いたら

「さぁ?それっきり」とケロリとしているもんだ。

それで私が物心がついた頃には、叔父の位牌は他の位牌から遠ざかっていく「動く位牌」になっていたのだ。

その騒動の次の日、身内に霊障が出ているなんて信じられない母が、叔母のハツエさんに電話をしてみたら、智義叔父さんの息子の義則君がこの一週間、原因不明の口内炎で食べ物が食べられなくなっていた。


(続きます)

記事に出てくる氏名はすべて仮名とさせて頂きます事ご了承ください。


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4、霊媒師

その「紫音さん」が、お客さんとしてウチに来られたのは私が43歳の春だった。

髪の長い目がぱっちりした綺麗な女性で、歳は30台半ばであろうか。

「どのようなご調子でしょうか?」

「肩と頸が痛いんです。特に左側が」

肩を触ると「痛ーい、痛ーい」と叫ぶ。こりゃあ大物を乗せてるかな・・・・・?また来たぞ、と気を引き締める。

この頃私は新しい技を追加していた。合気道の「三カ条固め」である。四方固めは手首を外側に捻って肩口で極めるが、三カ条固めは手首を内側に捻って脇の下で「コ」の字に固めて決める技である。

私は紫音さんに「神活」→「四方固め」→「三カ条固め」という当店のフルコースをご馳走した。

「んがぁああああ」と叫ばれたのは言うまでもない。

がしかし、肩と頸は柔らかくなった。

「何をされたんですか?」

「いやー、痛みで良からぬ者に出てってもらったんです」

また嫌な顔をされるのかな?と思ったら意外と嫌な顔もしなければ驚いてもいない。

「実はそれを取ってもらいたくて来たんです」

「???」

「実は、私の仕事は霊媒師なんです」

マジデスカー??!なんでまた霊媒師さんが整体に?」

「実は、仕事上、不成仏霊や魔をもらってしまうことがあるんですが、私自身、自分に入った者は見えないし取り除けないんです。でもマッサージや整体で揉んでもらうとそういう霊や魔は剥がれていくんですよ。霊って人間が肩が凝ったり腰が張ったりしてオーラが弱くなったところに吸着するんですが、その張りや凝りが抜けると掴まっていられなくなってスルリと落ちるんです。

「マジデスカー??!」

そうなのか、そうだったのか!それじゃあ、さんざんお客さんを叩いて腕を捻って悲鳴を上げさせてきた私とは・・・・まあ、細かいことは気にしない。今までそうやって生きてきた。うん。

「紫音」とは仕事上の通名であって、本名はちゃんとあるのだがここではあえて伏せる。

その後、全体をほぐしながらいろんなことを話すうち、是非一つ聞きたいことがあった。私の実家で抱える問題の話だ。

「実は、私の母方の叔父は私が2歳の時に自殺をしてまして、その位牌が何故かウチの実家にあるんですが、その叔父の位牌が少しずつ動いていて、ほかの位牌から離れていくんですよ。成仏してますかねぇ?」

人間とは図々しいもので、相手がその道のプロだとわかるとタダで聞こうとするから質が悪い。

紫音さんはしばらく目を瞑って精神を集中していたけれど、おもむろに言った。

「ああ、成仏していませんね。魔物に取り込まれて、眼が吊り上がって口が裂けている妖怪みたいになっていますよ。」

「げぇえええええええ!!」

それからしばらく目を瞑って何かを見ていた紫音さんが、私に言った。

「これではこの仏さん、浮かばれませんね。私が浄霊しましょう。」

「ほ、ほ、ほ、本当ですか?」

私の声は震えていた。

<続きます>

※≪注意≫上記の方法は絶対に真似をしないでください。後日にブログで書いていきますが、とんでもないことになりますのでご注意ください。


記事に出てくる氏名はすべて仮名とさせて頂きます事ご了承ください。



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3、四方固め

人間とは傲慢な生き物である。増長するものである。

人の身体に取り憑いたと思われる幽霊(と思われるもの)を手技で取り払うことが出来て、新たな可能性を見つけた気がした。

霊媒師ではないけれど、整体師が幽霊を取る。なんか、かっこよくなーい?

なんて自画自賛してニヘラニヘラしていた自分を今思い出すと、無知とはなんと恐ろしいことかと今では思う。

しかし、当時の私がそんなこと考える由もない。

妻が私に聞いた。「その叩いて追い出した霊はどこへ行くの?」と。

「さあ?どこかに行っちゃうんじゃない?」と、どこまでもおきらくな私であった。

お客さんのなかには、何人か(これは幽霊がのっているのかな?)と思われる方が来られる。異常な肩の張り、そして掴むと「痛でででで」と異常に痛がるのだ。

霊感があるわけではないので幽霊が見えるわけではないのだが根拠の無い確信だけは持っていた。

そんなお客さん達の頸の付け根を「神活」でバンバン叩いてきた。


その度に肩が柔らかくなり「あら、どうしてなの?」と言われることに、魔法使いにでもなった気分でますます増長してゆくのだった。


42歳の秋、何度か来てくださっている遠藤さんという看護師のお客さんが来た。

寝違えたのか左の頸肩が激痛なんです、と言う。

来たぞ、来たぞと内心小躍りする不謹慎な私。

「最近勤務されている病院でだれか亡くなられましたか?」

「ええ、最近、ずっと私が担当だった身寄りのない患者さんが亡くなられましたけど‥‥何か関係があるんですか?」

「多分その人の霊がその肩に乗ってますよ(きっぱり)」

「・・・・・・・・・(絶句)」

明らかに変な物を見るような眼で私を見ているが、当の本人はお構いなし、である。

そんな彼女の頸の付け根を「神活」でバシーンと叩いた。

が、張りが抜けない・・・・おかしいなともう2,3度バシーンと叩いたが全く抜けない。

「神活」も肩の張りが抜けなければ、お客さんにとってはただひっぱたかれただけの恨みしか残らない。

「・・・・・とにかく寝てみましょうか」

遠藤さんに仰向けに寝てもらい、左肩頸に手を当て、般若心経を唱える。

まかはんにゃーはーらーみったーしんぎょー、かんじーざいぼーさつ・・・・・・・・・

「どうですか?」

「まだ痛いです」

「・・・・・・・・」

このままでは、遠藤さんにとっては「幽霊がいますよ」と、変なことを言われ、頸の付け根をバシバシ叩かれ、念仏まで唱えられ全く不可解で不満しか残らない。

一か八かの手がある。

遠藤さんの左手を外側に捻りながら肩口に畳み込み、左手で遠藤さんの手首を掴み関節技に極める。合気道の技である「四方投げ」の最後の固め技である。

「ご容赦ください!!」

私は遠藤さんの腕を捻じり締め上げた。

「え?なになに?・・・ぎゃぁぁああああああ」

その痛みで遠藤さんの左肩が柔らかくなった。痛みで無理やり幽霊を追い出したのだ。

思いのほかうまくいった!

「どうですか?」

「はあ、疲れました」

ぐったりしてふらふらと帰られた遠藤さんを、その後見ていない。


※≪注意≫上記の方法は絶対に真似をしないでください。後日にブログで書いていきますが、とんでもないことになりますのでご注意ください。


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